女性のあらゆるライフステージにおける健康を考える上で、女性ホルモンの変化は絶対に無視できない因子の一つです。40代に入ると次第に卵巣機能は低下し始め、50歳前後で閉経を迎えます。さらに女性ホルモンの変化による体力低下や身体変化に加え、子供の自立や夫の退職、孫の誕生、両親の介護といった家庭環境の変化、知人や親族の不幸や夫の病気といった喪失体験など、様々な因子が絡み合い引き起こされる、精神的、身体的な症状の中で、日常生活に支障を来す病態を更年期障害と言います。また、更年期と思い込んでいる症状の中に、内科疾患が原因となっていることも多く注意が必要です。
更年期障害では、熱感(ほてり・のぼせ)・冷え、発汗異常、不眠、憂鬱・いらいら・不安感といった症状の他、肩こりや頭痛、眩暈なども様々な症状が出現しますが、ある調査では、40~50歳台の約60%の女性が日常生活に何かしらの支障を感じているにもかかわらず、「そのうち良くなるはず・・・」、「何科に行ったら良いかわからない・・・」などで、大半の方が病院に行かず、我慢したり市販薬を飲んでおられるようです。一方で通院することで60%以上の方が症状の改善を実感されています。
更年期の治療は、鎮痛剤や精神安定剤、睡眠薬などの内服治療、漢方療法、心理療法、食事療法、運動療法など様々です。更に最近ではホルモン補充療法が注目されています。海外では主流となってきているホルモン療法ですが、日本ではまだまだ認知度もかもしれません。一般的には産婦人科でホルモン補充療法が行われているケースが多いですが、糖尿病や脂質異常への影響、血栓症のリスクにも注意が必要です。皆様により安全な更年期治療を提案させていただきます。
薬物療法
①漢方薬
漢方薬というと、「マイルドなお薬なので安心」と思う方が多い一方、「本当に効果あるの?」、「粉で苦いから飲みにくい」など様々な印象をおもちになっているのでは無いでしょうか?ここ最近は、少しずつ漢方薬に対する認知度も上がってきていますがまだまだ誤解が多いかもしれません。実は漢方薬は、体格や体質によって効果の出方や副作用の出方が様々です。日本東洋医学会の会員としての経験を活かし、患者様一人一人にあった処方をさせて頂きます。
②ホルモン補充療法
中高年女性の健康を考える上で、女性ホルモンであるエストロゲンの低下や欠乏の影響をいかに調節するかが問題であり、ホットフラッシュなどのエストロゲン欠落症状がある場合や、骨粗鬆症の予防などに対して、ホルモン補充療法は治療適応があります。
日本ではまだ一般的でないかもしれませんが、欧米ではスタンダードの治療であり30~40%の普及率となっています。
一方で、糖尿病や脂質異常症への影響、心疾患への影響、乳癌発症への影響など問題視される一面もあります。当院では、しっかり内科診察を行った上で適応を判断し、補充療法開始後も安全に使用して頂けるようにサポートさせて頂きます。すでに補充療法を行っている方のご相談もさせて頂きます。
(補充療法開始前には産婦人科診察や乳癌検診が必要です。)